シワ改善の有効成分、ナイアシンアミド。
ビタミンBの一種で、医薬部外品の有効成分としておなじみの成分です。
これまでの効果は「バリア機能の改善、肌あれ防止」「美白」などが知られておりまして、化粧品の成分としてはずいぶん一般的なものでした。
それが、2018年にコーセーから「ザ リンクレス」が発売されるや、一躍スターダム成分に!!
2019年に入ったら、ナイアシンアミドを有効成分とするシワ改善化粧品が、押すな押すなの新作ラッシュ。
いったい、ナイアシンアミドとはどんな成分なのでしょうか? どんな作用をしてくれるのでしょうか? その謎について、迫っていきたいと思います。
ナイアシンアミドはどんな成分?
まずはナイアシンアミドは、どのような効果がある成分なのかをおさえましょう。
さっそくですが参考サイトをご紹介します。
化粧品成分オンライン(https://cosmetic-ingredients.org/)
作用機序、効果、エビデンスなどが本当に分かりやすく解説されています(脱帽)。
こちらのサイトで説明されている、ナイアシンアミドの効果は以下の通り。
・グルコシルセラミド、スフィンゴミエリンおよびセラミド合成促進によるバリア機能改善作用
・メラノソーム輸送抑制による色素沈着抑制作用
・コラーゲン減少改善による抗シワ・抗老化作用
肌あれに対する効果と美白効果に関して言えば、安全性や安定性も含めて「いい成分」として使用されてきたことが分かります。
さて、問題は3つめですが、上記サイトの説明を抜粋してみます。
シワ改善有効成分として承認されているため、その作用は有していると考えられますが、現時点では情報が少なく、シワ改善のメカニズムおよび有用性のデータも公開されていないため、抗シワ作用については保留とし、新たな情報がわかりしだい追補します。
まったくもってこのとおり。
現時点では情報が少なく、メカニズムや有用性のデータが公開されていない。
それなのに、医薬部外品の有効成分として認められている。ちょっとしたミステリーなのです。
なので「ナイアシンアミド 解析」とかで検索しても、欲しい情報は見つかりません。
欲しいのは、シワ改善効果のデータなのに!!
ちなみに、ビタミンBの詳しい働き(作用機序的な内容)についてはこちらをご参照ください。難しいけど、目を通す価値はあると思います。
青山ヒフ科クリニック「Dr.亀山のビューティコラム」より
化粧品・医薬部外品部会の議事録を発見した
大手のメーカーでいちばん最初に、ナイアシンアミドを有効成分として採用したのはコーセーと思われます。
だったら「コーセーが認可とったのかなー?」と思うのが普通ですが、コーセーからは一切(といっていいと思う)エビデンスが出てきてない。自社でエビデンスを取っているなら、張り切ってお出しするはずなのに、それがない。
先行してシワ改善化粧品を出したポーラや資生堂は、ニュースリリースだの論文だのでエビデンスをお知らせしているというのに。シワ改善って、いまいちばんホットなジャンルなのだから、エビデンスがあったら、ドヤ顔で出してもいいのに。
ちなみに成分について、コーセーの説明はこんな感じ
リンクルナイアシン※は、真皮と表皮の両方に働きかけ、目もと・口もと・頬・ひたいなどの、あらゆるシワの悩みをすばやくケアする有効成分です。 ※ナイアシンアミド
というわけで、なんだかモヤモヤした気分に包まれたまま今に至っています。まあコーセーは有効成分と言うよりも、トータルケアでシワ改善を狙った処方なので、いいっちゃいいんだけど。
が、いろいろ探してみたら以下のような議事録を発見したのでご報告したいと思います。
(ただし、すっごく読みずらい)
レチノバイタルについて検討されている
議事録を見ると、まず最初に殺虫剤についての議論、その次に歯みがき剤についての議論がされております。
その後に議論されているのが「資生堂レチノバイタルクリームV」について。やっと出てきた!!
ここで検討されているのは「新たに効能・効果として、『シワを改善する』を標榜する」のはオッケーかどうか?という点です。
レチノール自体は、資生堂をはじめ化粧品メーカーさんがエイジング系スキンケアに使っている成分でしたが、新たな効能・効果を追加するために、がっつりしっかり試験したデータを提出しなくてはいけないんですよね。
データを精査しているのは「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」というところらしいのですが、そのあたりのシステムというか段取りについてはよく分かりません。
とにかく、2017年1月20日(平成29年1月20日)に議論がされている。そして、試験データがばっちりだったので「承認してさしつかえなし」と問題なくオッケーが出ているということが分かります。
商品が発売されたのは、2017年6月。半年もしない間に、ものすごい急ピッチで製造から販売、広告まで展開したことになります。化粧品に関わる者なら誰しも『資生堂の本気を見た』という気持ちになったことは間違いありません。
同日、P&Gのデータも検討されている
ここからがハイライトです。レチノバイタルクリームVと同じときに、ナイアシンアミドの効能・効果の追加について検討されているのです。
ちょっと引用してみましょう。
続いて議題4、医薬部外品エムエフローションAW-2について機構より御説明いたします。部会報告資料No.5を御覧ください。申請品目の販売名はエムエフローションAW-2、申請者はP&Gプレステージ合同会社です。
そう、美容ライター仲間ともひそひそ話をしていましたが、ナイアシンアミドといえばSK-II。
SK-IIの美容液にはたいていナイアシンアミドが配合されておりますので、知見が蓄積されていて当然です。申請していたって、何のおかしなこともありません。
それで議事録を読み進めてみると、実験方法や実験データをかなりツッコまれているのが分かります。これは、直前に出てきた資生堂のデータが完璧すぎたためと思われるので、その点はある意味でもらい事故っていうか、とばっちりを受けているな、と同情できなくもない。
議論の内容をざっくりまとめるとすっきりしないデータを出されているけど、どゆこと?」という話が続いています。想像するしかありませんが、データが惜しい、実験結果のまとめが惜しい、使用法の説明が惜しい、と、なんらかの隙があったのだなと思われます。
細かいところまで議論が進んだ結果「統計解析の方法論ではないか⇒統計は専門外なので分からない」という、どうにも締まらないことになってしまっている。微笑ましいですね。
最終的にはこんな結論で議論が終わっています。引用しましょう。
○大野部会長 ありがとうございます。それでは私が責任をもって確認させていただきます。それではほかに御意見、御質問はございますでしょうか。よろしいですか。資料4については全ての先生方の御意見、御質問について回答いただいたと思いますが、資料5については残ったところがございます。5については確認ができて、問題ないだろうと私が判断したところで、報告を了承するということ。4の資生堂についてはもうこの場で了承するということ、そういうことにいたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
なんとまあ「部会長あずかり」案件になっております。
この後、部会長がいつどのようにジャッジをしたのかについて、この議事録には記載がありませんでした。というわけで、推測ではありますが、早ければ2017年中、あるいは2018年に入って、ナイアシンアミドの「シワを改善する」を標榜する承認が下りたのだと思われます。
ナイアシンアミドのシワ改善効果の承認は、おそらくP&Gが受けたもの
以上の議事録をじっくり読み込んだ結果、「ナイアシンアミドのシワ改善効果の承認は、おそらくP&Gが受けた」のではないか、という結論に至りました。
あれ? でもSK-IIから発売されてなくない? と思いますよね。実はこんなニュースリリースを見つけました。
PR TIMES 2019年3月19日 15時06分
おや?おやおや?
本商品はSK-II史上初、3つの医薬部外品効果※2)を1本に詰め込んだ美容液で、肌コンディションを総合的に整え、シワやシミ、肌荒れの3つの肌悩みにアプローチします。
※2:(1)シワを改善する。(2)メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ。(3)肌荒れを防ぐ。
もちろんナイアシンアミドが配合されています。
なんでここまでひっそり出してんのさ!! と心から叫びたいのですが、これ、ビジネス的な諸問題が解決していないのかなーと思います。
承認を受けたのはP&Gですが、現在、SK-IIはP&Gではなくコティという会社の傘下。
新製品もあまり出てこないし、CMは迷走しがちだしでいろいろ気になってはいたのですが、背景としてはこの「ブランド売却されちゃった」タイミングだったことを指摘せざるを得ません。
今後のエビデンスはポーラ・オルビスGに出して欲しい
というわけで、ナイアシンアミドのちょっとした謎を追求してみました。
エビデンスに関しては、ポーラ研究所がせっせと知見を溜めているので、そのうちニュースリリースしてくれるんじゃないかなと期待しています。
というのも「シワ改善市場全体が盛り上がればいい」という、社会的な志をもって新製品を開発している模様だから。
コーセーも、化粧品・乳液など新形状でナイアシンアミド配合の製品をリロンチしますが、まずは、ちょっとでいいから連用データを出すことを検討してほしいです。
では、取り急ぎこのへんで。ごきげんようー。
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